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「セバス、分析はできたの?」
「分析は完了しました。後はお任せ下さい。このゲームを圧倒的な力で攻略して見せましょう」
自信満々のセバスは自分で花を探す。選んだのは、小さく纏められたタンポポの花束。どう見ても、セバスには似合わない。魔王と一緒で薔薇の方が似合う……そう思っていたメルに、何故かタンポポを渡してしまった。
「わらわに渡してどうするのじゃ?」
「メル様にお願いがあります。耳を貸して頂けますか」
「ほほう……うむ、分かったぞ」
メルはルカの前に立ち、ニカッと見上げて笑う。
「ルカにプレゼントを持って来た。受け取ってくれ。わらわはルカの笑顔が大好きじゃ。だから、これからもずっと一緒にいて、笑顔を見せてくれぬか?」
後ろで見ていたアリスとヘイヤがキュンキュンしている。だが、ルカは硬直して動かない。
「どうした、受け取ってくれぬのか? そうか……すまぬ。わらわが一緒にいても迷惑をかけてしまうからな。忘れてくれ。大丈夫じゃ、わらわは一人でも……」
寂しそうに俯くメルを、ルカは強く抱きしめていた。
「泣かないで。私がずっと一緒にいてあげる」
「本当か? では、この花を受け取ってくれるのだな?」
「ええ、勿論よ」
母性本能を爆発させる満面の笑みに、ルカは完全にノックアウトしている。その光景を見て、ヘイヤが呟いた。
「アリスちゃん、メルちゃんって……」
「もしかして、女優の方が向いてるかもね。アイドル女優として育てようかしら?」
「うん、それがいいと思うよ。私もキュンキュンしちゃった」
素晴らしい才能の片鱗を見て、二人のテンションも上がっている。そうとは気づかず、メルは喜びながら無邪気に飛び跳ねていた。
「やった、受け取って貰えたぞ。セバス、これで良いのじゃな?」
「完璧でした。ルカ様はキタノ様よりハッタ様の方がキュンとしたとおっしゃっていました。つまり、母性本能をくすぐる相手に弱い。メル様以上の適任はいません。男が女にプロポーズするという固定概念を外せば良かったのです。さあ、ルカ様。鍵を渡して頂けますね?」
「まさか、そうくるとはね……じゃあ、タンポポのお礼に鍵をあげる。メルちゃん、どうぞ」
「ありがとう。では、ルカにはこれをやろう」
「あら、何かしら? タンポポだけでも十分嬉しかったけど」
メルは手書きのファンクラブ会員証を渡す。そして、アリスたちにも配って回った。
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