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「アリスとヘイヤは会員ナンバー一番と二番じゃ。嬉しかろう?」
そう言ってニパッっと笑う無邪気な姿は、一騎当千の破壊力を秘めている。ヘイヤは本能のままにメルを抱きしめ、アリスはひたすら頭を撫でていた。
「完敗よ。あなたたちが何をしようとしてるか知らないけど、応援するわ。メルちゃんのファンクラブ会員としてね」
「有難う御座います。そこで、ルカ様にお願いがあるのですが、あの二人が復活するまで休ませて貰えませんか?」
ハッタと魔王はルカの能力にかかったままらしい。五分くらいで元に戻ると言っていたが、予想以上に心の傷を負ってしまったようだ。
「いいわよ。奥のテーブルでティータイムをしましょう」
敵の本拠地目前で、綺麗な花に囲まれながら優雅に体と心を休める。
ハッタと魔王以外は体力が回復した。
「セバス、そろそろ行きましょう。ルカ、美味しい紅茶をありがとう」
「どういたしまして。この先にボスクラスの魔物はいないけど、キース様直属の強い魔物が徘徊してるから気をつけてね」
気の良い魔物に別れを告げ、まだフラフラしているハッタの代わりにセバスが先頭へ立つ。ルカの鍵を使って開いた扉の先では、レベルの高い魔物に次々と道を阻まれた。
しかし、幾らレベルが高い魔物であろうとも単体では最強の執事に敵わない。ヘイヤの補助魔法をフル活用し、強化されたセバスの活躍で難なく先へと進んで行った。
そして、周囲を見渡し立ち止まる。
「これは……アリス様、出口が近いようです」
「そうね、風を感じるわ。キタノ、ハッタ、いつまで呆けているの? さっさと立ち直りなさい」
「うぬ、そうだな。アリス姫の言う通り、こんな時に呆けている場合ではない。城は目の前なのだ。必ずや我が手でジーンを取り戻すぞ」
魔王の両手から黒いオーラが立ち上った。並々ならぬ力が溢れ出し、それを見たハッタとヘイヤは息をのむ。
この先、どんな強い魔物が現れても魔王がいれば大丈夫。そんな安心感がパーティーを包み込んだ。
「ジーンなんてどうでもいいわ。メルが眠そうなの。宜しくね、キタノ」
キタノの背中にメルが乗せられる。残念ながら魔力溢れるキタノの両手はおんぶにより封印され、安心感はどこかへ消え去ってしまった。
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