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「俺は……お前の言葉を信じないッ!」
「そうか…まあ、それもいい。全てを嘘とするのも1つの幸せだろう」
2人の人間が暗い玉座の間で向き合っている。
1人は勇猛果敢が人の姿を取ったような少年、勇者ゼラニウム。
もう1人は美人薄命という言葉がピッタリな儚げな美女、魔王ゼニアオイ。
「もう何もしゃべるな、魔王! ……俺は勇者でお前は魔王。ならばすることは1つだ」
「その通りだ、勇者よ。この首を取ってみるがいい。そうして君の強さを証明してみせてくれ」
「…ッ。言われずともだ! 行くぞ、魔王ッ!!」
先程聞いてしまった話を振り掃うように雄叫びを上げ、剣を振りかざす勇者。
その様子に悲しそうな、それでいてどこか嬉しそうな表情を浮かべる魔王。
不?戴天の仇とも言える勇者と魔王の戦いにしては、いささかおかしな空気。
その理由の全ては勇者と魔王の関係。いや、魔王の数奇な人生にある。
魔王はそのことに自覚があるため、戦いに身を入れることが出来ずに過去を思い出すのだった。
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