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初めは見えない暗殺者を恐れて目立たない様に生きていた彼女だが、徐々にそれも薄れていく。
チート能力で殺されないように防御を固めていたが、それも徐々に無くしていった。
よくよく考えれば、普通の人間も誰かに殺される可能性はあるのだ。
通り魔かもしれない。単なる事故かもしれない。もしかすれば、徴兵される可能性もある。
そもそも、この世界の住人では余程下手を打たなければ、チート持ちの自分を殺せない。
そう考えて、不安に思うのが馬鹿らしくなった彼女は人生を楽しむことにした。
「元男だった私が幼馴染みの妻になるとはな……人生とは不思議なものだ」
せっかく性転換したのだからと、彼女は恋愛をしてみることにした。
幸い、特典の能力で家事能力はカンストしており、顔も悪くなかったので彼女は非常にモテた。
その中から彼女はいつも一緒に居た幼馴染みを選び、幸せな結婚生活を送り始める。
それこそが破滅への引き金だとも知らずに。
「妊娠というものはこうも大変なのだな……自分の足の爪すら切れなくなるとは」
夫と愛し合った果てに自らの腹に愛の結晶を授かったゼニアオイ。
幸せの絶頂だった。家族さえいれば他には何も要らないと思えた。
だが、そんな幸せも全ては悲劇の前触れに過ぎない。
『耳寄りの情報だ。まもなくお前を殺す者が生まれる。今回は特別にそれが誰かを教えてやろう』
「まだ、生まれていなかったのか……。しかし、今更とは。この子を守らないといけないのに」
『何、その心配はいらんさ』
突如として告げられた事実に、彼女は生まれる子供のためにもまだ見ぬ刺客を必ず始末せねばと覚悟を固める。しかし、彼女の夢枕に現れた神は、顔の見えぬ唇を邪悪に歪ませながら彼女に教えてやるのだった。刺客の名を。
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