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そして、そこからさらに1年の時が流れた今日。
1人の女の願いと祈りが成就されようとしていた。
「本当に…強く…大きくなったな…ゼラニウム……」
「ふざ…けるな…ッ」
「私の愛し子……」
剣に心臓を貫かれた状態で、ダラリと力なく勇者にもたれかかる魔王。
どこからどう見ても勝敗は明らか。
だというのに、両者の顔は全く逆のものに見える。
勇者が顔を苦しみで歪ませ、魔王が酷く幸せそうな顔をしているのだから。
「魔王……何故、親であると黙って俺と戦わなかった? 俺の手が鈍ることにでも期待したか」
「ふふふ…まさか……私はただ…覚悟を持って殺して欲しかっただけさ。何も知らずに…親を殺したと……後で後悔して欲しくなかった」
「俺のためだとでも戯言を言うつもりか…?」
「その通りだよ…全ては愛しい坊やのためさ」
魔王はゆっくりと、血に塗れた手を伸ばし勇者の頭を撫でる。
ゼラニウムの白い髪が赤い血で赤く染まっていくのを、ゼニアオイは嬉しそうに眺める。
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