あとひとり。

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「紗耶香!」  会うなり、いきなり景が抱きついてきた。 「もう、私、心臓もたないよお」  夏休み真っ盛り、四人目の事件が起こり、景は紗耶香に会いたいと言って聞かず、紗耶香の部屋にいるのだった。 「いなくならないよね? ね?」  捨て犬のように怯えた目で見上げられ、紗耶香は景の頭を優しく撫でた。 「落ち着いて、私はちゃんとここにいる」  景の呼吸が、次第に穏やかになっていく。 「もう……誰かが殺されるのは嫌だよ」  紗耶香も無言で頷いた。  景によると、町だけでなく全国の学校が、夏休み中のパトロール等の防犯対策に乗り出しているらしい。経験したことのないほどの大事件を身近に感じ、紗耶香の身体がぶるりと震えた。
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