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――この人は、ひょっとしたら狐なんじゃないかしら。
私は彼のことを、密かにそう疑っているのです。
彼と初めて出会ったのは、肉食女子の友人が同じ専門学校の他学科の男性陣と開催した合同コンパの席でした。私はそういったイベントには滅多に参加しないのですが、その時はどうしても頭数が足りないのだと拝み倒されて、仕方なく出席していたのです。
向かい合わせに座った男性陣の中で、彼はすぐに私の目に留まりました。
――狐みたいな人。
それが第一印象でした。
男性陣の隅っこにちょこんと座った彼は、面長で糸のように細い目をしていました。狐を擬人化したらこんな風になるだろうと万人に思わせられそうでした。ついでに髪の色まで狐色。
女性陣の端っこに座った私は、周りで繰り広げられる男女の楽しげな会話などそっちのけで彼を観察しました。
彼も会話にはあまり参加していませんでした。私同様、頭だけ必要だったのかもしれません。ちびちびとお酒を飲み、目の前の和風料理をちまちまと齧っていました。
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