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再会
南ちゃん、泣かないで。
僕、大きくなったら南ちゃんのこと、必ず迎えにくるからね。
泣かないで、南ちゃん。
目にいっぱい涙をためて、小さな手を握りしめあった六歳の春。初恋なんて言葉、当時の私は幼くてもちろん知らなかったけれど、いまになって振り返れば、確かにあれは私の初恋だったと思う…。
……なんて夢を見てたら、すっかり寝過ごした。
「はあっ。はあっ」
学校に続く坂道を駆け抜けて、校門にたどり着いた私は、速度を緩めて立ち止まり、肩で大きく息をした。ホームルームが始まる間際。ぐずぐずしていたら遅刻になってしまう頃合いだから、周りを歩く生徒もいない。
当然急がなくちゃいけないからここまで走ってきた。
だけど、だけどねっ。
走ると、胸が痛い。
え?病気かって?
違います。
胸がデカイと、走ると痛いんだって。
あー、痛い。
私、高崎 南は、ここ私立星館高校の二年生。花も恥じらう、十六の乙女なのだ。
深呼吸をして、息を整えようとしたその時。
とんっ、と誰かが私にぶつかって来た。体がカクンと前のめりになる。
やだ、転ぶっ。
と思ったのは束の間で。
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