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サマーナイトナイン
照りつける太陽の下、打ち上げられた白球が球場のバックスクリーンを叩く。
逆転サヨナラを決めたその一打は相手チームのスタンドを沸かせ、逆に俺達が通う燈明学園の応援スタンドから太鼓の音すら失せさせた。
「あー、終わっちまった。俺の野球人生」
燈明学園野球部3年生の俺、長谷川喜一はベンチの陰で無気力に呟く。
こういう時は膝から崩れ落ちて両の目から涙が溢れるほどに泣くのが普通なのだろうが、1年も試合せずベンチ要員としてくすぶっていた自分は負けたという今の現状にピンと来ていないのだ。
俺の渇いた瞳はマウンドに両手をついて嗚咽している1年生の後輩ピッチャーに向けられていた。
弥永英明。例年1回戦負けが当たり前だった弱小燈明野球部を今年は3回戦まで引っ張り上げた天才。
野球は9人でやるチームスポーツだ。そんなことは解ってる。
だけど俺たち燈明の野球部員たちが地区予選3回戦まで上ってこれたのは間違いなく1、2回戦を完封した弥永のおかげだ。
この試合だって、9回裏まで弥永は好投していた。だが最後の最後で連投の疲れが出たのだろう。
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