サマーナイトナイン

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 フォアボールで初の出塁を許し、最後の最後で失投。逆転を許してしまった。  グラウンドにいる投手以外の8人がマウンドで泣き崩れる弥永に駆け寄っていく。  夏の日差しに照らされながら、白いユニフォームを土で汚した9人が互いの肩に手をかけて泣き合う。  照りつける光が強いせいか、俺の瞳にはそれがとても眩しく見えた。 「長谷川、すまなかったな」  不意に隣でパイプ椅子に座る立花監督が短い謝罪を告げる。  いつもは生徒に対して厳しく、時には手も出す鬼監督がこの時だけは静かに優しい声を出していた。  その謝罪は何に対するものなのか。  3年生の俺じゃなく1年生の弥永を起用し続けた事に負い目を感じているのか、試合が終わってしまった今はその理由なんてどうだっていい。 「……いえ、今までありがとうございました」  俺の口からはただ平坦な声でその一言だけ出てくる。  視線はマウンドで泣き合うピッチャーの弥永とキャプテンであり俺の元女房役であるキャッチャーの小田のバッテリーに固定されたまま。  整列し、試合終了の礼を済ませスタンド席の応援団と観客たちに頭を下げている間も意識は呆然としていた。  これで、俺の高校3年間を費やした野球人生は終わりなのか。     
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