教えて、ゆう君

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「いや、これ以上スピード出したら、スピード違反になるし…」 「そっか!じゃあ、あのバイクの人は、スピード違反で死んじゃったのかな?」  死んじゃった? 「でもね、死んじゃったのに、何でまだ走ってるのかな?バイクが好きだから?でも、何で追い越すのかなの?何で?ゆう君」  知るわけねーだろ!  口から飛び出しそうになった乱暴な言葉を、僕はなんとか飲み込んだ。 「さあ、何でだろうね…」 「そっか……ゆう君にも、分からないことって、あるんだ…」  彼女の初めて聞く落胆の声は、僕の心に火をつけた。 「そんな事ないよ!えっとね…」  俺は考えた。そういえば、峠の道で走り屋のレースが問題になっていたような。事故も多発して、死人まで出たとニュースで見た気がする。この辺のことだったかは、分からないけど。 「多分、愛ちゃんが見たバイクの人は、まだレースをしてるつもりなんだよ」 「レース?」 「そう。十年位前、この辺で、暴走集団がバイクレースをよく行っていたらしい」  俺は、それっぽい事を、適当に説明した。 「バイクレース?いいの?そんなことしても」 「良くないよ。現に、あのトンネル内で亡くなっている人もいる」 「まあ!」 「レースの勝敗が着かないまま亡くなったんじゃないかな?だから彼は、あのトンネルを走る車やバイクを追い掛けて、追い越して、まだレースをしているんだと思うよ」 「そっかぁ。あの人は、トンネルの中だけで、競争してるんだね!」  トンネルの中だけ? 「追い越した後、少し走ったらね、消えちゃったの。何でかなーて、不思議だったのー」 「そ……そう…」 「さすがゆう君!何でも分かるんだね!」  彼女は、霊が見えるとか言う少し痛い子だった。だけど、僕の適当な説明で納得して、極上の笑顔を僕に返してくれた。  痛い子でもなんでもいい。僕を頼って、僕に笑顔を返してくれる。それだけで、十分素敵な彼女だ。
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