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先生に贈るサプライズ演奏は、喜んでもらえたと思う。
演奏後、久しぶりに顔を合わせた仲間内では、当時の話や、今回来られなかった子が今どうしてるかって話なんかで盛り上がった。
そのあいまに、わたしは郁人さんについてサオリから教えてもらった。
学年はわたしたちのふたつ上で、この春から大学二年生。
わたしが一年のとき郁人さんが三年だから、そのときの中学のコンクールでは演奏してたはずだけど、残念ながら全く記憶に残ってない。
演奏順が近かったからなのか、離れすぎてて見られなかったのか。
中学の吹奏楽部でフルートの男子ってあまり見かけないから、見てたら多少は記憶に残ってるはずなんだけど。
家に帰ってコンクールのブルーレイを探せば、もしかしたら演奏の映像が見られるかもしれないけど、ブルーレイは出演順でいくつかに分けて販売されるから、同じディスクに収められていない可能性が高い。
でも、そこは吹奏楽。
兄弟姉妹も吹奏楽をやってるって人は案外多くて、サオリもそうだった。
サオリの三つ上のお兄さんはオーボエで、高校もサオリや郁人さんと同じ。
「お願い。サオリんとこの定演のブルーレイ貸して。お兄さんのころの。もちろん買ってるでしょ?」
「うん、まあ、間違いなく買ってあるはず」
でもどこにあるんだっけなぁ、とサオリが首を捻る。
「なんなら、帰りに寄らせて。家の前で待ってるから」
「なに、どしたの?」
サオリが驚いた顔でわたしを見る。
わたしも、なんでこんなに気になるのかわからない。
でも、もっときちんと、あの人の演奏が聴きたいと思ったんだ。
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