4人が本棚に入れています
本棚に追加
ブルル、ブルル、とスマホが震える。
わたしは歩道の端に寄って、通話表示にタッチした。
「カナ、今どこ?」
聞こえてきた声は、ファゴットのサオリのもの。
「え、どこって……地下鉄の3番出口のとこ」
地下鉄出口の表示を見ながら答える。
「 なんで3番? うちら今1番出口出たところ。近いのこっちの出口だよ」
「そうなの? 」
そっか、出口が違ったのか。
スマホの向こうからは、他の子たちの声も聞こえる。
結局、当初の予定どおり、会場の裏にある公園で落ち合うことになった。
次の信号を渡って、二つ目の角を曲がって、まっすぐ。
教えてもらった道順を確認しながら、足早に歩く。
あ、青信号が点滅してる。
急いで渡らないと、と慌てて横断歩道に踏み出したとき、勢いよくこちらに右折してくる黒い自動車が目に飛び込んできた。
轢かれるっ!!
避けなきゃ、と思うけど、体が動かない。
そもそも、そんなに運動神経がいい方でもない。
やだっ!!
車はもうすぐそこまで来ている。
わたしはフルートの入ったケースを抱きしめて目をつむった。
最初のコメントを投稿しよう!