出会ってしまったから

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ブルル、ブルル、とスマホが震える。 わたしは歩道の端に寄って、通話表示にタッチした。 「カナ、今どこ?」 聞こえてきた声は、ファゴットのサオリのもの。 「え、どこって……地下鉄の3番出口のとこ」 地下鉄出口の表示を見ながら答える。 「 なんで3番? うちら今1番出口出たところ。近いのこっちの出口だよ」 「そうなの? 」 そっか、出口が違ったのか。 スマホの向こうからは、他の子たちの声も聞こえる。 結局、当初の予定どおり、会場の裏にある公園で落ち合うことになった。 次の信号を渡って、二つ目の角を曲がって、まっすぐ。 教えてもらった道順を確認しながら、足早に歩く。 あ、青信号が点滅してる。 急いで渡らないと、と慌てて横断歩道に踏み出したとき、勢いよくこちらに右折してくる黒い自動車が目に飛び込んできた。 轢かれるっ!! 避けなきゃ、と思うけど、体が動かない。 そもそも、そんなに運動神経がいい方でもない。 やだっ!! 車はもうすぐそこまで来ている。 わたしはフルートの入ったケースを抱きしめて目をつむった。
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