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「なにやってんだっ!!」
声が聞こえるのと、ぐい、と体が強い力に引っぱられるのはほぼ同時だった。
腕を引かれた勢いのまま、わたしはなにかにぶつかりながらそれと一緒に歩道に倒れこむ。
すぐ後ろの車道を、車が走り去って行く音が聞こえた。
助かっ……た?
「ぼーっとしてんじゃねぇ!」
すぐ近くから怒鳴られて、びっくりしてまぶたを上げる。
目に入ったのは、黒いシャツ。
わたしがぶつかったのは、人だったらしい。
ぶつかったっていうか、助けれくれた?
「あっ、す、すみません!」
尻もちをついたその人の上に、わたしは倒れこんでいた。
反射的に謝罪して、視線を上げると、すごく不機嫌そうな顔がそこにある。
あ。
この顔、ついさっきも見た。
顔は女の人みたいにきれいなのに、眉をしかめて目をすがめられると、すごく怖い。
近くで見ると、肌だってなんかきれいだし、目も二重で、鼻筋もすっとしてるのに――。
「てめぇいい加減にしろよ!」
つい見とれてしまっていると、更に怒声がとんできた。
ひぃぃ、と身を縮こまらせながら、わたしはごめんなさいぃ、と謝った。
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