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「おっそい、カナ!」
「遅いわよ、郁人(いくと)」
わたしたちがフルートの集団に近づくと、ほぼ同時に叱られた。
わたしは2コ上のアヤナ先輩に、一緒に来た郁人って名前らしいこの人は、お化粧ばっちりの美人な女の人に。
「すみません!」
「わりぃ」
「時間ないけど、一度合わせておこうって話になってるのよ。すぐに用意して」
今日、誰が来られて誰が来られないのか、連絡はどこまで届いているのか――情報は曖昧で、当日になってみないと何人くらい集まるのかわからなかった。
さすがに、うちの学校の卒業生が大半だと思うけど、知らない人も思ったより多い。
「カナ!」
「っはい!」
先輩に叱られて、わたしは慌ててフルートを組み立てる。
この空気、懐かしいな。
わたしは高校で吹奏楽をやらなかったから、先輩に叱られるのは久しぶり。
自分のフルートを構えて、音を出そうとしたとき、隣にいる郁人さんのフルートが見えて、わたしは思わずぎょっとする。
「黒っ」
思わず、声が漏れてしまう。
郁人さんのフルートは、黒かった。
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