思わぬ再会

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私はまだ気付いていなかった。 ヤキモチ大王がヤキモチメーター振り切ってることに。 「七バスといえばあれだな、恵比寿様」 え、世間ではうちと言えばエビス様なの? 初めて聞いた。 「七福神みたいな顔した運転手さんいない?」 「10年前だしな」 テーブルを一緒にしたわけじゃなかったけどそんな話になり 「青藍の甲子園なら福永さんじゃね?」 ってつっち。 「あぁ、福永さんの武勇伝ね  いつも言ってるよね、甲子園の送迎したって」 「あの運ちゃんまだいんの!」 「いますいます」 「それに七バスの運ちゃんには  かつて運賃をまけてもらったこともあった」 「名前なんてゆーの?」 「え、路線のドライバーはあんま知らな…」 「お姉さんの名前」 「ユイです」 「ユイちゃんか~何才?」 「ハタチ」 「9個下か~全然平気」 「俺もどっちかというと下の方が」 ↑ぽんと後藤 「お前らな、男連れで飲んでる人  ナンパすんなよアホか」 イケメンパパの横で飲んでた人が 「すみません」って なぜか一之瀬さんに頭を下げた。 チラリそっちを見ると 「……汗」 めっちゃ怒ってるやん 「いえいえ、お気になさらず」 あなたの愛想笑いは怖いんだってば。 先にお会計を始めたのはナツキくんたちだった。 「ほら夏貴帰るよ」 「いや、まだあそしょぶの」 「眠い?」 眠そうに目をこする。 「夏貴、毛玉が待ってるぞ」 そう言われてパッと顔を上げた。 「マダまってる?」 「一緒に寝るんだろ?」 私と龍子さんの間の椅子から降りて 「ガイドしゃんなちゅかえらなきゃ」 お会計してるイケメンパパの方にあっさりと走っていった。 そんなナツキくんの後ろ姿を見送って エビグラタンの可愛いナツキくんのママは 「あの、ありがとうございました!」 「いえいえ、私たちも楽しかったので」 「えっと…松ぼっくり受け取ってくれて」 あの時の話? 「しかもまだ持っていてくれたなんて  夏貴も嬉しかったと思います  私も嬉しいし」 「ステキなガイドさんに会えてよかったです  七色バス見るたびに嬉しそうに指差すんですよ」 ガイドの仕事は一期一会が殆ど。 こんな風に再開して喜んでもらえるなんて やっててよかったって思える 頑張ろうって思える この仕事が好きだなって思う お礼を言うのは私の方 たった1つの松ぼっくりが どれほど励ましてくれるか。
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