6人が本棚に入れています
本棚に追加
「ダラ砂漠以来だな。少しは腕を上げたのかい?」
「フィアナ!?ちょっと、イスリーダは大丈夫なの?」
再会した炎の軍人が自国を離れていることに対して、ディアナは少し焦った。
自分に使者を遣わす程なのでは、と考えていると炎斧姫が応えた。
「軍人にタメ口とは、お嬢さんも相変わらずと言ったところか。イスリーダは平気さ。新任騎士団長が良くやってくれてる。現在はファメル王国が前線になりつつあるので援軍という訳さ。」
「…そっちだってお嬢さん呼ばわり変わってないじゃない。と、新任騎士団長ってまさか。」
「ああ、お嬢さんご執心のあの男だよ。」
目の色を変えたディアナを見て、フィアナはもう少し話してやろうと思った。
「最初はかなり反対したものだ。他の者に指揮権を任せて数名で戦場に赴くなど団長のすべき事ではないからな。何度慌てて追いかけたことか。」
理解に苦しむ、といった面もちで続ける。
「だが追いついてみればどうだ。既に敵将は討ち取り、味方に被害は無く、敵軍は引き上げてゆくではないか。最速で最良の結果を出すなど、そう簡単にできる事ではないだろう。」
「相手が強く、難所であればより力を発揮できるのだろうが、見ている者からすれば独善的にも無責任にも映る。しかしあの男は戦果を誇示することをしなければ慢心もせず、ただより良い結果を出す。見ている者の見方が…変わる。」
あの男なら信じられる、と安心した様な顔になるフィアナを見てディアナは考える。
(あいつの強さの源は何なのだろう…あいつは何の為に闘うのかな…。)
ひとしきり話し終えたところでディアナが物思いに耽っている様なので、フィアナは少し『口撃』してみることにした。
「それで?お嬢さんは屋敷の稽古から飛び出して冒険者の真似事かい?ここはギルドで修行なんてものは…」
「私は自由になることで、本当の世界を知った。だからこそ、本当の強さを目指せたの」
間髪入れずに、真っ直ぐフィアナを見て応えた。
期待出来そうだね、とまた安心した様な顔になるフィアナだった。
8章 炎剣士の今と今の自分
最初のコメントを投稿しよう!