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「結構攻められてるわね…急がないと!」
周囲を見渡せば被害の状況を物語っていた。
破壊された建物、負傷者の救助、未だ終わることのない戦闘の熱気。
砂漠や火山とは質が違う熱さに嫌な汗が滲んでくる。
近付くにつれて大きくなる悲惨な状態に足を速める。
ここはもうイスリーダ帝国。面影を残しながら戦場へと変わりつつある故郷だった。
フィアナと共に各国の戦場を渡り、戦果を上げていた彼女たちのもとに故郷イスリーダの窮地の伝令が届いた。魔族の大部隊がイスリーダに侵攻を開始した、と。
飛び出して行ったディアナを追う為に後任に部隊を引き継ぐフィアナ。
「…副隊長、私はあの阿呆を追う。ここは任せるぞ。他の軍、部隊と協力し戦線を維持し続けろ。」
了解の敬礼を後に駆け出しながらぼやく。
「単騎突貫などまるであの男の様ではないか……まぁ悪い気はしないが。」
そして現在ディアナと並び、故郷を駆ける。
「ああ急ぐぞ。どうやら平原の方まで押し返して留めているようだ。」
「目と鼻の先ね。まさに最前線………もう少し耐えて!」
倒れ伏す者、鳴り止まない剣戟、飛び交う爆炎、中でもひときわ激しい所を目指して駆け抜ける。途中、幾度となく攻撃を仕掛けられるが足は止めなかった。
そして遂にその目に映る。再戦を心に誓い、修行の果てに追い求めた炎剣士の闘う姿が。
「おおおおおおおっ!!」
周囲を震撼させる気合い、そこから生まれる斬撃が敵を斬り伏せる。
どのくらい闘い続けているのだろうか。
歪みが見える鎧、返り血を落とせない剣、だが決して消える事のない炎の瞳が、この戦いが長期戦であることを物語っていた。
「団長!遠征班部隊長フィアナ、援護に入ります!一度傷の手当てを!」
「フィアナかっ!助かるぜ。先に部下達を一度下がらせる。戦線を押し上げるぞ!」
了解、と軍人らしく即座にフィアナが動いた。騎士団に引けを取らない力を発揮する。
「ところで、あの子はお前の部下か?見覚えある顔なんだが、軍人ではないな。」
「団長、後で殴られますから覚えておくと良いですよ。」
ハァ、と溜め息混じりのフィアナ。そこに
「貴方、やっぱり私の見込んだ通りね!どう?『今』の私と勝負してみる?」
戦場ということを忘れた様な笑顔のディアナが颯爽と答えた。
9章 戦場での再会
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