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「…ううう~。強いなぁ、あいつ。」
灼熱の火山道の奥地、その一角で大の字になり天を仰ぐディアナがいた。
打ち込んだ拳には手応えがあった。もう少しで勝てる、と何度も思った。
「火山に巨人とか…暑苦しいってのよ、も~。」
ここはファメルロック。ファメル王国西部に位置する大きな火山の中だ。
砂漠とは違う熱に悪戦苦闘していると巨人を発見、すぐさま攻撃を仕掛けた。
巨人上等、強者なら尚良し。意気揚々とするディアナだったが、相手の事を知らなさ過ぎた。
焔巨砦ゴルマーグ…古の大戦より存在する焔の巨人。巨大なハンマーで周囲をなぎ払うだけでなく、投げつけて遠距離をも粉砕する怪物だった。さらには背中にゴブリンを多数忍ばせていて乱戦も可能な歩く砦・要塞とも言われていた。
「もうちょっとだったのに!ゴブリンがチョロチョロと~~!!」
初めは優勢だった。自分の拳で巨人はダメージを受けていた。勝てる相手だった。
バランスを崩した巨人にトドメのフレイムアーツを打ち込むところだった。
ゴブリンが巨人の背中から飛び出してくるまでは。
「うわわっ!ちょ…邪魔よっ!次でキメるんだからっ!……て、あっ……!!」
あっという間にゴブリンに包囲され、攻撃が遅れた。その隙に巨人が体勢を立て直し、あたふたしているディアナをハンマーでホームランにしたのだ。
致命傷は免れたが、かなり飛ばされてしまった。
「う~ん。手数が足りないのかな…威力には自信あるのよ、うん。」
巨人は耐久力が高い。しかし自分の拳でバランスを崩せた。
一撃で倒せないにしても、ダメージは蓄積している。
もたもたしていればゴブリンに囲まれるので、速やかにダメージを与えないといけない。
「スピードと威力を落とさずに2、3撃も増やすには…」
大の字で目を閉じるとボコンボコン、と溶岩の音。
目を開くとメラメラ、と炎が視界に入る。
「そうだ…拳の連打じゃなくて炎の…」
フレイムアーツの炎を連撃に加える。炎を纏った連撃はさながら炎と舞踏(ダンス)をしているようなイメージになった。
身体を起こし、もう一度巨人のもとへと向かう。
試さずにはいられない。
打ち込みながら完成させるのだ。
「新しい必殺技が思いつきそうなのよねぇ。あぁ、丁度良かったわ。ちょっとこの技、受けてみてくれない?」
イメージしたダンスを炎舞撃に昇華させて。 2章 再起の炎拳士
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