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「それじゃ、これからヨロシクね!」
晴れやかな声で伝える。
憑き物が取れたように心が軽く、今までになかった力が湧いてくる。
先の闘いから一転、二人の関係は良好なものとなっていた。
物の見事に「竜の結果」を再現され、意気消沈していたディアナにダルギオンは再度語りかけてきた。彼女は静かに、大人しく聞いていた。
『コレモ一ツノ結果ダ。目的ヤ怒リハ確カニ力トナルガ、ヨリ大キナ想イヤ信念ノ前ニハ届カナイ事モアル。コノ差ハドノ様ニシテ生マレ、広ガッテユクノカ…我ハソノ答エヲ求メ、一ツノ解ヲ得タ。』
「……それは何?」
ぽつり、と子供が聞くように言葉を挟んだ。
『力ノ使イ道ダト、我ハ思ウ。』
そう信じている、と親のような言葉が返ってきた。
『目標、目的ヲ遂ゲレバ終ワリナノカ。アノ剣士ヲ超エル力ヲ身ニ付ケ、倒セバ達成ナノカ。ソノ先ニハ何モ無イノカ。』
『アノ男ハ最強ノ剣士ヲ目指ス旅ノ中、既ニ力ノ使イ道ヲ、最強ト思エル様ニナッタ後ヲ考エテイタノデハナイカ、ト思ウ。』
『初メテ人族ニ敗レ、復讐ニ身ヲ焦ガシ力ヲ高メ、勝利ヲ確信シ挑ムモマタ敗レ、アノ男ニ再ビ闘オウト言ワレタ時、コノ差ニ気付イタノダ。』
『アノ男ハ最強トナッタ後、己ノミノ為ニハ力ヲ振ルワナイダロウ。』
淡々と語られる炎竜の解。
それは闘いで得た力をどの様に行使するかの差。
ただ一人の剣士を打倒する為の力と最強の先を見据えた力の差。
未来を見る信念の差だった。
「…そうね。力も、想いも届いていなかったわ、私。」
炎竜の辿った道を体感して、彼女も理解する。
そして考える。どうすればこの信念の差を狭めることができるのか。
早かった。
そう、彼女は早かったのだ。旅立つ時もそうだったように。
「なら一緒に修行しない?」
『…何ダト?』
炎竜も虚をつかれた。
「自分の為だけじゃ駄目なら皆の為よ!その皆の一人目がアナタってことね。」
『……成ル程ナ。ソノ様ナ考エ方モアッタノカ。』
炎竜も理解を示す。己には無く、ディアナには即答できた解の一つ。
解は多い方が善いだろう。
「さぁ!一緒に修行を始めるわよ。共に闘う者こそライバルであり、友でもあるの!」
拳に纏う炎が力強く燃え盛る。 6章 未来を見据える炎
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