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「…そうなんだ。あいつが騎士団長をね……決めた。私は傭兵になる。悪いけどイスリーダには戻らないわ……今はね。戻ってそう伝えなさい。」
修行の最中、イスリーダ帝国から使者が遣わされ、ここオグローン火山にやってきた。
神族と魔族の大戦が始まり、娘の身を案じた家族が帰国を促したのだ。
使者からイスリーダ帝国の現状を聞くうちに新任の騎士団長の話になった。
家族を守るためにも、と帰国を決意したディアナだったが、その騎士団長の名を聞いて動きを止めた。
そして目を閉じ、静かに深く考え、だけど素早く結論を出した。
「ここからならファメル王国が近いわね。初陣かもしれないし、急がないと。」
食い下がる使者を帰して下山の準備を進めるディアナに対し、修行仲間が背中を押してくれた。
『我モ同胞の様子ヲ見ニ戻ロウ。戦ガ活発化スルナラバ修行ニハ丁度良イダロウナ。』
「不謹慎な意見だけど否定できないわね。実益を兼ねた修行だと意識しておくわ。」
素早く荷物を整えて、ライバルに言葉を返す。
「ありがとね、ダルギオン。どちらが先になるか分からないけど、あいつと再戦できたら次はアナタとの勝負だからね!」
『約束シヨウ。次ハ全力デ相手ヲシテヤロウデハナイカ。』
言ってくれちゃって、と笑いながら炎の友竜に拳を突き出し、山を駆け下りて行く。
ソウ遠クナイウチニナ、と呟きながら炎の友人に背を向け、天高く飛び立って行く。
「騎士団長かぁ。どんどん強くなっていくのね。でも、私もあの頃とは違うわよ。それにまだまだ強くなってやるんだから!」
勢い良く下山し、ファメル王国のギルドへと向かう。既に数多くの冒険者や兵士が集まっており、戦いの準備や城壁の強化工事が始まっていた。
まずは情報を仕入れ、戦場を駆け抜けながら修行しようと考えていたディアナの前に一振りの斧が ガツン!! と歩みを止めさせた。
「こんな所でまたその顔を見ることになるとは思わなかったよ。お嬢さん。」
紅蓮の炎を纏う斧姫と再会した。 7章 別れ、そして再会
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