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5
四季と出会ったあの日の深夜。
なんだかよくわからないやつに喧嘩を売られ、面倒だと思いながらも、難なく喧嘩に勝った。
どう考えても、今回の件はそいつらの事なんだろうけど……。どんなやつだったかな?
最悪なことに、万人共通で、どうでもいいことはいつまでも覚えていられないのが、人間のさがである。
はてさて、どうしたものか……。さっさっと、見つけ出したいのだが。
若干イラつきながらも、もっと鮮明に思い出そうと唸っていると、タイミングを見計らったように、スマホの着信音が鳴った。
案の定、しずくからだった。
本当に、早いな。切ってから、まだ5分経ったくらいじゃないか?
磨白は、そんなことを考えながら通話ボタンを押した。
『よー。さっきぶりー』
「挨拶はいいから、早くしろ」
『へいへい。……えーっと、あの日お前に喧嘩売ってきた連中は雑魚にかわりないし、今回、そいつらは関係ない』
「? なんだか、まわりくどい言い方だな」
『それもそのはず。だって、あの雑魚の後ろにいたのは、女なんだから』
「女? なんで、また……」
めんどくさそうな。
その言葉を遮るようにしずくは続けた。
『そんなん、その女が四季に惚れてるからに決まってんだろ』
「……あ"?」
『まぁまぁ、怒るなよ。今はその女の素性を知るのが最優先だからな』
「……さすが、恋敵潰しのプロは言うことが違うな」
『まぁーな。その道ざっと16年さ』
「かっこつけていうことじゃねーし。 普通に激重感情すぎて引く。 りょくもよくこんなんと付き合ってられるよな。 てか、まだ盗撮と盗聴続けてんの知ってんだからな。 しかも、ハメ撮りしたいとか言って、実はトんだりょく相手に勝手にやってんだろーが」
『えー?心の声漏れてる系?』
「すっとぼけんな、カス」
『……でさ、その女なんだけどー』
「露骨」
『はいはい、その話はあーとーでー!今はこっち優先な』
「そうだった。カスのせいで、見失った」
『てめー、調子乗んなよ?こっちがその気になれば、てめーなんざ、5分で片付くんだからな?』
「そりゃそーだろ。なんてたって、僕と一緒に喧嘩してたんだから」
中学時代、何故かこいつと一緒に呼び出される事が多くて、一緒に喧嘩してたんだよな……。本当に煩わしかったな、ダブルで。
しかも、こいつ、初めて会ったときに、
りょくの事好きになる確率38%か。つまり、恋愛には発展しないが、友愛は発生するのか……。ちょっと気が済むまで殴らせろ。
とか。ぶっとんだこと言ってたよな。フツーに、ヤベーやつだ。今思い出した。
なんか腹立つから思いっきり潰しにかかかった気がする……。どっちにしろ、互角なのは確かだ。
今更だけど、りょくって、しずくが僕と喧嘩互角なの知ってるのかな?しかも、一度ならず三度くらいやりあってるんだよな。
すると、電話口から、
『それ、ぜってー、りょくには言うなよ』
と、低音ボイスが聞こえてきた。
「……あぁ、声に出てたか」
『本当にその事りょくに言ったら、潰しに行くからな』
「……めんどくさ。そんなことより、早く続き言えよ」
『……はぁ。わかった』
そうして、くだらない口喧嘩の終止符を打ち、本題の女の情報を頭に叩き込む。
『……まぁ、ざっとこんなもん』
「そうか。ありがとう」
『おーおー。……まぁ、本当に、やばそうなら応援行こうか?』
「いや、大丈夫。拳になる前に話し合いで潰してくるから」
『ふーん。なら、大丈夫そうだな。だって、お前、拳も口の悪さも最強だもんな』
「お前は蹴りと手癖の悪さが天下一品だけどな」
『ははっ。そりゃー間違いない』
「じゃあな、ほどほどにしとけよ」
『……じゃーなー』
プツン
まぁ、バカップルに何言っても意味ないのは身を持って知ってる事なんだけど。
……さてさて、僕も愛する人との幸せの為に動き出そうかな。
今度こそ、死に目さらしてやるから、覚悟しててよね。おねーさん。
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