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「おはよー……。まったく!どこで道草食ってたんだよー」
笑顔で挨拶したかと思えば、途端に不機嫌な顔になる。朝から喜怒哀楽が激しいやつだ。そこも好きなところの1つなのだが。
「別に、ゆっくり来ただけだよ。早く行こう、遅刻するよ」
「おう!行こーぜっ」
佐賀間 四季。染めた明るい赤い髪が特徴で、喜怒哀楽が激しい、僕の恋人。
学校までくだらないことを話ながら歩いて行く。くだらないことなのだが、四季と話しているだけで幸せなのだ。
暫く歩いていると、太陽の光で反射して、キラキラ輝く、眩しい金髪が目に入った。
「あ、りょくだ」
四季が眩しい金髪の名前を呼ぶ。
その声に向こうも気がついたようで、
「おぉ…。おはよ、二人とも。ふぁ~」
軽く手を振って応えた。朝が弱いりょくは相変わらず眠そうである。
「りょく、おはよう」
僕が、りょくの頭に手を乗っけて、なでなでしていると、りょくは気持ち良さそうに目をつむり、眠りに入ろうとしていた。
なんだか猫みたいだ。かわいいな。
癒されていると、突然、りょくの頭が僕の手から離れていく、と同時に、僕の嫌いなやつの声が聞こえた。
「おっはー、ばかっぷるー」
「おう。朝っぱらから、ばかっぷる呼びって…。まぁ、それは別にいいけどよー。…お前らも人のこと言えないだろ、しずく?」
「それは否定しない」
「おい、しずく!突然何すんだよ!オレはさっきまで、磨白に頭撫でてもらってて気分良かったんだぞ!?」
「うん?じゃあ、オレが頭を撫でてあげる。よしよし」
「やめろ!てか、お前とは喧嘩中なんだから、話しかけんな!離せ!」
ぶん!と大きく体を回して、りょくは足早に学校に向かって走っていってしまった。といっても、ここは、もう学校内の敷地なので、りょくは校舎に向かって走ったといった方が正しいのだが。
「…」
「えー、今回は何したんだよ?しずく」
四季がしずくに聞く。しずくは何気ない顔で、
「えー?何って…ハメ撮りしよーって言っただけー」
「「……」」
思わず無言になる僕たちに少しムッとしながら、
「おい、なんだよ。お前らだってそれぐらいするだろーが」
と、反論した。僕たちは何とも言えない気持ちで、聞いたことを後悔しつつ、りょくに心の中でごめん、と謝る。
「まー、いいけどよー、これは俺たちの問題だしー」
と、ふて腐れながらしずくは言う。
「まぁ、そーだな。こればっかりはお前ら二人の問題だから俺らはお手上げだな」
「そうだね」
へいへい、としずくは適当に返事を返しながら、先に校舎に行こうとしたが、何かを思い出したようで、僕の方に向かって、ずかずかと歩いてくる。
「なー、磨白」
「何…ッ!」
と言う、磨白の腕を引っ張り磨白にしか聞こえない大きさの声で、ぼそっ、と言う。
「お前、あれ、ちゃーんとお片付けしとけよ」
「?」
僕はしずくの言うあれが何なのかわからず、不思議に思っていると、しずくは、イラッとした顔で、
「あ、その顔忘れてんな。ったく…。お前が四季と会ったときのあいつらだよ。あいつらがまた嗅ぎ回ってるからな。さっさっと片付けろよ。でないと、四季に危害が及ぶぞ」
と、言った。そして、そのまま何も返事をしない磨白の腕をパッ、と離すと、
「ここまで言えば、わかんだろ、白雪姫。じゃあな」
と、それだけ言い残すと後ろを振り返ることなく、しずくは校舎の中に走って行った。あんな感じだと、授業サボってりょくを拉致する気だな、と四季は若干呆れ気味に思っていた。
「じゃあ、俺らも中に入るかー……?どうした、磨白」
すると、ハッと磨白は我に返り、
「…ご、ごめん。中入ろうか」
精一杯の笑顔を四季に見せて、すぐに四季から視線をずらした。四季は自分から視線をずらした磨白をじーっと見つめていた。四季は様子がおかしい磨白に特に何も言うことなく、
「おー」
と、呑気な声で答えた。しかし、声とは裏腹に四季の目が鋭く磨白を見つめていたことに磨白自身、気づいていなかった。
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