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 学校も終わり、自宅に帰ってきた磨白は、鞄を置き、ぼーっと宙を見ていた。  今、磨白の頭の中には、朝のしずくの言葉が繰り返し流れていた。      『お前が四季と会ったときのあいつらだよ。あいつらがまた嗅ぎ回ってるからな。さっさっと片付けろよ。でないと、四季に危害が及ぶぞ』    “片付ける“    これは、磨白にとって、いつもと同じことをすればいいだけだから、何も問題なかった。  ───でも……   “四季に危害が及ぶ“  朝から磨白の頭を支配していたのは、その言葉だった。  本当なら、学校をさぼってすぐにでも片付けたいことだった。しかし、それが出来なかったのは、最悪なことに磨白は相手が誰なのか微塵も覚えていなかったのだ。ただ、その日は売られた喧嘩を買って勝ち、綺麗な星空を見ていたら、四季に告白されて付き合うことになった……。  磨白にとって、その日は、四季という宝物に出会えた日で、一番大切な四季との初めての思い出だった。だから、他のことはどうしても、断片的にしか思い出せないのだった。  ならば、しずくに聞くしかない、と思い休み時間にたずねたが、早退したらしい。あいつは案の定、りょくと二人で早退したようだ。  ダメもとで電話をかけたが、出る気配が無かったため、今の段階では打つ手が無かった。  「……」  一人、途方に暮れていたときに、着信音が鳴った。見ると、しずくだった。磨白は急いで通話を押し、電話に出た。  『お、ごめんごめん。今、電話気づいた。何の用?特に用がないなら、りょくの寝顔を堪能したいんだけど』  …やっぱり、りょくを拉致ったな。だが、今はそれどころではない。    「用があるから、電話してんの。これでも結構急いでるんだ。朝言ってたやつらのこと、詳しく教えてくれないか?」  『ん?磨白の方が詳しいんじゃねーの?ってか、わざわざオレに連絡しなくても、他のやつに聞けばいいんじゃね?』  「お前と違って、連絡先は四季とりょくとしずくぐらいしかいないんだ」  僕はあの小学校中学年以降から、まともに人と関わっていない。しかも、もともと仲の良い友人もいなかった。だから、残念なことに三人しかいないのだった。  そんなことを知ってか、知らずか、やつは言う。  『おわっ、さみしー』  これには急いでいることもプラスして、ド低温ボイスで、  「潰すぞ」 と言ってしまった。すると、  『冗談だって』 と、反省した様子もなく、ケラケラと笑いながら言う。  「……」  そして、沈黙により、伝わったのか、やつは真面目な口調で続けた。  『…といっても、オレも人伝だからなー……。まぁ、あいつに聞けば教えてくれると思うぜ。情報も速いし詳しく教えてくれるし、連絡もすぐにつくから、聞いたらすぐにかけ直す。待ってろよ』  「助かる。ありがとう」 と、言うと電話が切れた。  僕はしずくからの連絡を待っている間、もう一度、あの日の事を振り返っていた。
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