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タイスケの顔を見ると、彼はニヤニヤしていた。好奇心旺盛なタイスケの事だから、萩野さんが言おうとしている言葉を予想して、ウズウズしているに違いない。僕だって、ちょっとわくわくしている。だから、萩野さんの次の言葉が待ち遠しくて、彼が話しはじめるまでの時間が、すごく長く感じた。
「もうこれ以上、危険な事に首を突っ込むのは、やめてくれ」
それが、萩野さんの頼み事だった。
違う――と、僕は思った。
これは、タイスケが待ち望んでいた言葉じゃない。タイスケを見る。あっけにとられたような顔をして、萩野さんを見ていた。
僕だって、まさかこんな事を言われるとは思ってもいなかった。だけどよくよく考えてみれば、萩野さんの立場なら、僕達にはこんなふうに言わなければいけないものなんだと気付いた。
「ふざけんなよハギノ!オマエ、期待させておいて結局そんなことしか言えねーのかよ!!」
タイスケが憤慨している。きっと彼は、体裁ばかりを気にする大人は嫌いなんだろう。
「大典、お前がいくらキレようとも、俺の言いたいことは変わらない。いいか?今後一切、警察沙汰になるような事件には首を突っ込むな。間違っても、磯賢治の事件に関わろうなんて思うなよ。あれは、警察でも捜査が難航している。お前には何も出来ないだろうから、それなら最初から関わらないでくれ」
「オレはオマエなんかの言うことなんか聞かねー。好きなようにやらせてもらうからな!」
「またそれかよ。とにかく俺は忠告したからな」
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