9人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
肩に手がおかれる。タイスケのものだと分かっていても、遼一が横にいるような気がしてならない。
会いたいと思った。率直にそう思った。それ以外の感情は、今はない。
じゃり、という土の音がしたかと思うと、次の瞬間、頬が吹っ飛んだような感覚をおぼえた。
タイスケに殴られたのだと気付くまでに、少しだけ時間がかかった。
「コースケがいくら泣いても遼一さんは戻って来ないんだぞ!ちょっとはしゃんとしろよ!いつまでウジウジしてんだよ!!」
「タイスケは、親友を殺された僕の気持ちなんて分からないんだ」
僕が涙声で言うと、タイスケはフンと鼻で笑った。口の中で鉄の味がする。切れたなと思った。
「よえー奴は、そればっかり言うんだ。オレが親友を殺されたわけじゃないから、そんなの分かるわけないだろ。でもな、コースケがこんなみっともねえ事をしてたら、遼一さんだって嬉しくないはずだ。『俺のせいであいつは立ち直れない』って、悩んでるかもしれねーだろ」
何という主観的な意見だろうかと、僕は呆れ返ったが、それは僕が卑屈になっているだけで、本当は彼なりに励まそうとしてくれているのだと、わかった。
「……僕だって、好きでこんな気持ちになってるわけじゃない」
だが、口から出るのは、悲しいほどに卑屈な言葉だった。
「じゃあいつまでもそうしてろ」
最初のコメントを投稿しよう!