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萩野さんはそう言った後、「用があるから」と呟いて、逃げるように部屋を出て行った。
「ハギノ、オレがキレたらこえーから、逃げたんだな」
得意げに言うタイスケに「違うよ」と言える度胸があったのは僕だけのようで、彼の周りにいる三人の少年達は、萩野さんが来た時から、すっかり萎縮して黙りこくっていた。タイスケの機嫌がななめなので、僕は萩野さんとタイスケの会話を聞いていて、気付いた事を彼に話すことにした。
きっとこれを聞けば、タイスケの機嫌も直るだろう。
「僕には、萩野さんはまた協力して欲しいって言ってるように聞こえた」
「はー?コースケ、ついに頭おかしくなったのか?どこをどう聞いたらそうなるんだよ」
予想通りのタイスケの反応に、僕は少し笑った。やっぱり中学生だな。相手の言葉をそのまま受け取ってしまうから、その裏に隠れた本音を読み取れない。
「萩野さんは、わざわざ磯賢治さんの事件を引き合いに出して、僕達を注意した。そんなの、いちいち例えを出さなくてもいいのに、わざわざ萩野さんは口にしたんだ。あれは、僕達にまた協力してくれって言ってるようにしか聞こえなくて。ほら、萩野さんも職業上、ストレートには頼めないだろうからさ」
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