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タイスケはそう言って、ケラケラと笑った。リンゴはもう半分が無くなっている。「たりねー」などとぼやかれないだろうかと不安になっていると、タイスケはヒロミチが持っているお皿の上からリンゴをいくつか奪った。
最近になって知ったことだけど、タイスケは食い意地が張っている。食べ盛りといえばそれまでだけど、彼はボクシングを嗜んでいるのに、体重の事は気にしなくていいのだろうかと思ってしまう。ボクサーといえば、試合に向けての減量に苦しんでいるというイメージがあるものだから、タイスケも減量はしなくていいのかなと疑問を抱いてしまう。
まあ、僕の事じゃないし、僕が口出ししても無駄だから、何も言わないけれど。
「そういえば後藤さんとタイスケって、警察から感謝状もらえるんですよね。すげーっす」
ヒロミチは、タイスケをちらちらと見ながら、リンゴをかじって言った。そんなにタイスケの機嫌が気になるのだろうか。まあ、怒らせると厄介そうだけど。
「ケーサツは、無能だからな!オレ達でも分かった犯人が、どーして捕まえられねーんだろうな」
「証拠が無かったから、らしいよ」
僕は、呟いた。
親友の遼一は、トラックに撥ねられて死亡した。警察は当初、交通事故として捜査をしていたが、そのトラックの運転手の「遼一は後ろ向きで道路に飛び出してきた」という奇妙な供述から、やがて事故ではなく、事件としてこの件を調べなおしていたらしい。
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