reunion

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これ以上讃えられるのも何だか嫌なので、僕は慌てて話題を変えた。タイスケが学ランを着ていたのを、僕は一度だけ見た。日曜日の昼過ぎの事だから、部活にでも行っていたのだろうか。いや、そもそもタイスケはちゃんと学校に行っているのだろうか。僕としては、ずっと紅蓮ビルにいるイメージしかない。 「オレは天才だから、ちょっとくらい休んでも大丈夫だよ。テストで最下位にならなけりゃいいからな」 自信満々に言う彼を見て、僕は「ふうん」と頷いた。そのせいか、不服そうな表情を、タイスケは浮かべる。そして「コースケ、なんかつめてーな」と、呟いた。 「今年は受験生になるのに、余裕だね」 「おー。オレは、つえーからな。高校も、推薦で行けばいいって、センコーに言われたんだぜ。すげーだろ!」 「うん、すごいすごい」 ちょっと冷たい物言いになってしまったのは、僕がタイスケを羨ましく思ったせいだ。 スポーツ推薦という手を使って高校に入学するなんて、何の取り柄もない僕には、凄く素晴らしい事のように思える。そして彼がちゃんと学校に行っているんだと分かり、ちょっと嬉しくなった。 「コースケは賢いから、ベンキョーしなくても大学行けそうだよな」と、また勝手にタイスケが僕の株を上げたので、慌てて否定しようとした時だった。 コンコンコンと、部屋の扉が静かに鳴って、来客を僕達に告げた。 「あいてまーす!」     
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