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萩野さんはふいにそう言って、部屋の扉を開け、廊下に置いていたらしい紙袋を持ってきた。萩野さんが紙袋をテーブルに置いた途端、タイスケはひったくるようにそれを取った。
紙袋には、四角い箱が入っていて、タイスケは包装紙をビリビリと勢いよく引きちぎった。
「ハギノもたまには気が利くじゃん!」
萩野さんが持ってきてくれたのは、クッキーの詰め合わせだった。
「まさかこんなもんよこして、オレに頼みがあるとか言うんじゃねーだろうな」
タイスケは早速、クッキーをつまみながら、萩野さんを見た。
「相変わらず、お前は勘がいいな」
静かに萩野さんが答えたのを聞き、僕は素直にタイスケを凄いなと思った。それにしても萩野さんは、タイスケに何を頼もうとしているのだろう。本物の萩野さんも謎めいていて、僕には彼の行動や思考を先読みすることが難しかった。
「俺は、警察官としても、個人としても、康介君や大典が事件を解決に導いてくれた事に対して、すごく感謝している。ありがとう。……だからといっては何だが、俺からひとつ、頼みがある。これは大典だけではなく、康介君、君にも聞いてほしい事なんだ」
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