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 それまで何度も同じようなことはあったのだけど、そのときも僕の頭上で街灯は突然消えた。  傘を傾け、僕はじっとその街灯を見つめた。それから周囲にある街灯も見た。  それらは当然のことに点灯したままだった。  舌打ちをして、僕はふたたび明かりを消した街灯を見あげた。  こういうのを僕は何度も経験してる。  なんの前触れもなく、いかにも消えそうな徴候もなく、突然街灯が消えるというのに何度もぶちあたってきた。  回数は憶えてないけど(そんな記録をとっておくわけもないから当然だ)、たぶんこの三年で七、八回はあったはずだ。  となると、年に二回以上あったということになる。  弱く首を振り、僕はしばらくそのことの意味を考えてみた。  それだけ重なるってことは因果関係が想定できる――と思ったのだ。  つまり、僕の接近と電球が切れることにはなんらかの関係があるというわけだ。  雨はしとしと降っていた。  周囲の街灯からたどり着いた明かりはビニール傘を輝かせていた。無数についている細かな水滴がそれぞれ鈍く輝いているのだ。  あらゆるものがそうであるように電球にも寿命がある。  いつかは消えるはずの運命を負っているわけだ――そう考えながら僕は目にはいる限りの街灯を数えてみた。  だいたい七本くらいある。  都内全域であれば、何万本、いや、何十万本もの街灯があるはずだ。  そのうちの幾つかには寿命を迎えそうな電球がついていることになる。  七分の一というのが実際にあった割合だから、仮に都内に七十万本の街灯があったとして、そのうちの十万本はいつ消えてもおかしくない状態ということだ。
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