指紋消失の危機

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 亜実花は軽やかな、いつもの音楽で目を覚ました。  「ん……朝か……あれ?」  スマホから流れてくるアラームの音楽を止めながら、亜実花は夜中の出来事を思い出した。 「地震!」  慌ててスマホで地震情報を検索した。 「あれ?」  地震情報によると最近ここら辺での地震は観測されていなかった。  よく考えると今は真夏でコタツなんて置いていない、というか、そもそも亜実花の部屋にはコタツなんて無い。だからコタツに頭を突っ込む事は出来ない。ついでに亜実花はロフトで寝ていた。布団の周りに食器棚なんて無い。 「夢だったんだ……でも何かリアルだったなぁ」  ホッとしてスマホで時間を確認すると、8時を少しまわったところだった。 「ヤバイ。始まっちゃう」  亜実花は毎朝8時15分から始まる韓流ドラマの再放送を観ている。  物語も山場になってきていて、見逃す訳にはいかない。  亜実花はロフトからハシゴで降りた。  毎日寝るためにハシゴの登り降りをしている。めんどくさいが、亜実花は寝る部屋と食べる部屋が一緒なのが嫌で、このロフト付きのアパートの部屋を選んだ。本当は二部屋ある部屋を借りたかったが、亜実花の給料じゃワンルームが精一杯だ。  テレビのスイッチを入れ、チャンネルを合わせる。ちょうどオープニング音楽が流れ始めた。亜実花は急いで冷蔵庫から紙パック入りのコーヒーと牛乳を出し、グラスと昨日買っておいたパンをテーブルに置いた。  朝食をとりながら、ドキドキワクワクするのが日課だった。
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