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彼らの20××年 - New Year's Eve -
「透、お雑煮の餅は何個食べる?」
昨日、透の実家から20個ほどの餅が送られてきたのだ。
「3個かな?賢吾は?」
ぼんやりとテレビを見ていた透がオレの方を向く。
少し眠たげな目元がかわいい。
「とりあえず3個。大きかったし」
透の親戚が杵と臼で仕上げたという餅は普通のサイズの1.5倍の大きさで、鏡餅として飾ってもいいくらいだ。
「福井先生から届いたおせちもあるしな」
福井先生からは恒例の高級おせちがクール便で届いた。
中を確認した透は、今まで口にする機会のなかったキャビアを食べられると心待ちにしている。
そんなの言ってくれたらすぐ買ってきたのに。
「ありがたいな、餅もおせちも」
「ありがたいね」
「来年もいい年になるといいな」
「いい年になるといいね。オレたちにとっても、オレたちを見守ってくれるみんなにとっても」
「そうだな、そうだとうれしい」
微笑みながらも睡魔に抗うように目をしばたかせる透の頬にキスをして、頭を撫で、耳の裏をやさしく掻く。
透はうっとりと瞳を閉じて、ハァと小さな息をつく。
その色っぽい唇をついばんだあと囁く。
「寝室に行く?」
「ん」
透は薄く開いた瞳でオレを見つめて口元を緩ませる。
甘えるように、誘うように。
オレは上がりかけた腰を下ろして熱い唇を奪う。
艶めくチョコレート色の瞳が溶ける前に。
新しい年がくる前に。
END
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