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『強い人間は、人前で泣かない。本当に強い人間は、人前で涙を隠さない』
僕と虫の言葉が重なった。あるB級アクション映画の台詞で、普段なら誰もが聞き流すようなシーンだが、僕には響いて、ずっと心に留めている言葉だ。
ああ、こいつは本当にあの頃の僕なんだと、この瞬間に確信した。
「じゃあな」
「ああ」
虫は再びガラスへのタックルを続け、羽が欠けても止めず、それ以降一切喋らなかった。
僕は再び歩き出す。車のヘッドライトが、カーディーラー店のショーウィンドーに僕の姿を映し出す。
制服を着た中学生の頃の自分が写り、再び、今の自分の姿になった。
「老けたな。はは……」
眠らない街の中、僕は一人とぼとぼと、家路についた。
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