12/17
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「……それなら俺は見られたほうだ、って言ったのには続きがあって」  そんな中、廣田がぽつりと声を落とす。  その声には端々から緊張感がにじみ出ていて。相変わらずわたしの頭を押さえたままの廣田の手の感触や温度も相まって、こちらにもその緊張が感染していく。  廣田はなにを言い出すつもりなんだろう? わからないから、なんだか怖い。 「見られたのは、汐崎にだったんだ。それから少しして、俺もおまえみたいに自分の好きなやつが自分以外の誰かに恋に落ちる瞬間を見た。そのときもおまえと同じで告白しなくてセーフだったって思ったし、そんな自分にヘコんでどうしようもなくなった。でも俺は、諦めも悪いし、ずるくて卑怯なやつだから。そいつの恋が終わるのを待って、こうして弱ってるところに付け入ろうとしてる。ほんとはあいつ……汐崎は、俺らの手助けがなくても上手くやれるやつだけど、一芝居打ってもらってたんだ。そっちの親友にも聞いてみたら? 最初は誤魔化すかもしれないけど、全部わかってるからって言えば、打ち明けてくれるだろ」  やがて覚悟を決めたように一気に言いきった廣田は、はぁ……と長いため息をついた。こんなに長く喋ったところは見たことがなくて、ぽかんと口を開けてしまう。それでなくても、一気に情報を与えられたわたしの頭は、それを整理するだけで精いっぱいだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!