第1話 「命の行方」

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 そして、2番目に多かった答えが「分からない。死んだことがないから分からない。」である。至極もっともな答えであるが、小学生ながらにつまらない答えだなと思った。  中学に上がってからも、命の行方に関する研究に俺は没頭し続けた。死をこの目で、間近で感じ取りたいと思うようになっていった。そのために、医学部を志望するようになり、勉強を必死で頑張った。  死と親密になる職業として、葬儀屋や警察官も候補には上がったのだが、幼い頃から迷惑をかけてきた両親に親孝行したいという想いもあったので、医者を目指すことにしたのである。  そして、高2の冬、俺にとうとう彼女ができた。  彼女は心に病を抱えていた。自殺癖があったのだ。俺はどうやら自らので死を引き寄せてしまったのだと、自分のことが少し恐ろしく感じられた。  睡眠薬、ガス中毒、リストカット、そして彼女と別れたあの日には、飛び降り自殺。  全て未遂に終わったわけだが、ガス中毒で自殺を図ろうとした時は本当に彼女は死の淵をさまよっていた。死ぬ寸前まで行ったんだと思う。  あの時の彼女の表情は今でも忘れられない。スマホの中の専用のフォルダにしっかりと保存されている。  あれから8年が経った。俺は今医師国家試験会場へと向かっている。    俺は会場を目指し全速力で走っている。     
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