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「さあさあさあさあ、ここにおわす方こそ、このブティックのオーナーにして、ジパングが誇る観光大臣、『武田信玄様』にてあらせられるぞ。」と、平賀源内は声高らかに言った。
「あまり大きい声を出すな、源内。俺は今二日酔いで頭がひどく痛いんだ。でも俺はこの店のオーナーで観光大臣で、偉いからよ、店の様子を1日1回は見とかないとな。」
【高級ブティック“風林火山”オーナー 兼 ジパング観光大臣 『武田信玄』】
やはり俺の勘は見事に的中したようだ。オーナーである武田信玄が現れただけで、店内の空気が一変したような感覚を受けた。それほどまでに彼の存在感は他を圧倒する何かを含んでいるのだ。
「あーー、光源氏様行かないでー。」
「今度はいつ会えるのー?」
「何時上がりですかー?」
「食べちゃいたいぐらい、好きよ。」あ、一人どすの利いた声が混じっている。
熱狂的ファンの取り巻きから逃れるように、絶世の美男子が店の中にやっとの思いで入って来た。
「すいません、出勤途中にファンに見つかってしまい、少々遅れてしまいました。おそらく僕のコートに発信機が取り付けられているのが原因でしょう。」と、涼しげに言い訳を述べた。
「だからあれほど言っているだろう、出勤時と退勤時は仮面をつけろと。俺の手製の『ホワイトタイガーマスク』が気に入らねぇってのか?」と、武田信玄は凄みを利かせて言った。
「はい、実はあの仮面は僕の美的センスに合わなくて。というよりも、僕の顔を隠す理由がありませんから。僕の顔は世界のみんなのためにあるものですから。」
【高級ブティック“風林火山”看板モデル 兼 ジパング二枚目大臣 『光源氏』】
「あれ?光源氏って確か源氏物語の主人公で、架空の人物だったような・・・」
「細かいことは気にするな。彼はこのジパングでナンバーワンの美男子なんじゃぞ。」と、俺の突っ込みに対して漱石さんのフォローが入った。
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