第7章 「謁見」

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 一通りこのブティックを構成する人達の紹介を受けた後、俺はやっとの事で国王様との謁見の際の服装選びを開始することにした。公式な場に赴くわけだから、正装にふさわしいのはやはりドレススーツなのだろうか。ソファに腰掛け優雅に紅茶を嗜む光源氏さんに尋ねてみた。 「あのー、国王様と謁見する時ってどのような服装を着ていけばいいのでしょうか?」 「ずずず・・・ふむ・・・マルちゃんに会いに行く時の服装か・・・。」 「マルちゃん?光源氏さんってそんなに国王様と親しい間柄なんですか?」と、驚きを隠せずやや大きめの声を出してしまった。店内にいた客の数名がこっちを振り向いたので、少し気恥ずかしい思いがした。 光源氏は前髪を整えながら、 「実はね、今や国王であるマルコ=ポーロことマルちゃんとは幼馴染なんだよ。3年前の戦いで王座に即く前は同じ街に住んでいたんだよ。よく二人で飲みに行ったものさ・・。」と、遠い目をした。 「そうだったんですね。以前はどこに住んでいたんですか。」 「なにわ吟醸の貧民街に住んでいたのさ。この僕の美貌が世に出る前の話だよ。」 「貧民街・・・。ジパングにはそんな場所もあるんですね。天国の人々は何不自由なく暮らしているのだと思っていました。」 「確かに僕たちは“死人”で、過去の人だよ。でも、僕たちはここジパングで生きている。生活をしている。呼吸をしている。・・・現世だろうが死後の世界だろうが、生きるってことは簡単じゃないんだよ。」  深い・・・・と思いつつ、いつになったら国王様と謁見できるのだろうと考えてしまう自分がいた。
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