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光源氏さんに言われるがままに国王様にお目にかかる際の服装を仕立ててもらった。高級感がありながらもシンプルなデザインのスーツは案外俺の地味な顔にも似合っていた。さすがはこの店の看板モデルであり、ジパングの二枚目大臣こと光源氏さんだ。ふと思ったが、二枚目大臣って一体どんな役職なんだろう。どのような職務があるのだろうか。
と、そんな至極どうでもいいことに考えを巡らせていた俺は、突然の出来事によって現実へと引き戻された。
女性の悲鳴が聞こえてきたのである。
「ーーよっ、返してよっ、私のお気にのバッグーーー!!8万ポロリンもしたんだからーーッ!!」
(ポロリンとはジパングにおける通貨の流通単位である。完全に、国王マルコ=ポーロの悪ふざけである。)
顔を下げて声のする方を振り向くと、チェック柄のワンピースを着た小麦色の肌の素朴な女性が必死な形相で店の入り口に向かって声を張り上げていた。
「俺の店で盗みを働くとは・・・いい度胸じゃねぇか。どうだ、久々に俺の腕っ節を披露してやろうかぁ?」と、オーナー武田信玄は店の奥からゆっくりと歩いて出てきた。
「オーナー、犯人はもう店の外へと逃げてしまいました。」と、光源氏さんの報告が入った。
「・・・・ふぅ。世は無常だな・・・。」
「いや、取り返してよ私のバッグ!」被害者の女性の悲痛な叫びが炸裂した。
「まあ、落ち着きなさい、お嬢さん。あんたは運がいい人だ。」
「え?なんで運がいいのよ!お気に入りのバッグを盗まれてるのよ、こっちは!」
「今の時間帯はな・・・あいつらのパトロールの時間なんだよ。」
「え・・・・あ、そっか。そうだ、気が動転してて忘れてたわ。そうよ、この街にはあの方々がいらっしゃるじゃない!」
突然女性の顔に輝きが戻った。一体あの方々とは何者なのだろう。この街にはヒーローがいるのだろうか。いるのなら是非とも会ってみたい。
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