第1章

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 古くは、ローマ皇帝やアレキサンダー大王、チンギス・ハン……。第二次大戦の後は、アメリカとソ連。ソ連崩壊後はアメリカ大統領がその任務をおっていたが、グローバリズムとやらの影響で、近年はフランス、ドイツ、日本などのサミット参加国の首脳にも知らされるようになっていたのだ。 「一国支配の時代は終わって、各国の協調体制で世界のことを考える時代になっていますから、前のように私たちが一方的にいろいろ決めることはできなくなっているんですよ。だからつい契約の更新が遅れてしまって……」とアメリカ。 「まあ、そんなことはもうどうでもいい。問題は、これからどうするか、だ」とフランス。 「火星に移住できるようになるのは何世紀先か分らないし、宇宙ステーションに住める人数は限られている」とドイツ。 「戦うか。我がロシア軍とアメリカの軍事力があればあんな円盤ひとたまりもあるまい」とロシアの大統領はウォッカの小瓶を振り上げて、興奮して叫ぶ。 「しかし、地球からどれくらい離れているか知りませんが、あんなにたくさんの円盤で簡単に地球まで来てしまうんだから、我々より遥かに高度なテクノロジーを持っているはず。勝てる相手ではありません」とアメリカ。  万策尽きた、という空気が会議を支配した。 そのとき、沈黙を破る声がする。 「あの~、シキキンは返してもらえるんでしょうか?」  声のする方を見ると、日本の首相がいつのまにか通信マイクを使い、大家さんと話している。 「バカっ、やめろ!」と回りが止めるのも聞かず、「地球を出ていくのはいいでしょう。でも、もちろん、シキキンは返してもらえるんでしょうね」と日本の首相は話し続ける。 「シ、シキキン……、何ですか、それ?」  大家さんが動揺しているのに気づいた日本の首相は、これは何かあるな、とさらに追求の手を強める。 「敷金・礼金のシキキンですよ。部屋を借りるとき、預けるでしょ。地球を借りるくらいなのだから、シキキンもかなりのものを預けているはず。引っ越せと言うのなら、返していただくのは当然の権利です」 「……」  通信が切れた。 「なんてことをしてくれたんだ。シキキンなんていう制度があるわけないだろう。ああ、これで終わりだ!」とロシアが叫び、頭を抱える。そのとき、 「おい、見ろ、円盤が帰っていくぞ!」とドイツの首相が声を上げる。
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