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その朝は、雨だった。
あの人は朝早くに出張で出掛けてしまった。
昨夜の小さな諍いの仲直りもせずに、行ってしまった。
帰ってくるのは一週間後だ。
胸が痛くて切ない。仲直りしてから、送り出したかったのに、何も言わずに行ってしまった。
重い足取りで歩いていると、誰かがスカートを引っ張った。
あのクリクリ髪の女の子が、スカートを掴んでいる。
いつも目が合うと逃げてしまうのに、私のすぐ下で小さな赤い傘をさしてスカートを掴んでいる。
驚くことに、二人いるのだ。
赤い傘をさした同じ顔の女の子が二人、お揃いのワンピースを着て泣きながら私のスカートを掴んでいた。
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