夜の校舎

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 そして翌日。  登校した学校ではちょっとした騒ぎが起こっていた。  三階の教室の電灯が、総てではないけれど割れたり不能状態になっていたりしたのだ。  間違いなく夕べの出来事が関係している。そう思った私はすぐに昨日の見回り担当だった先生の所へ向かった。  職員室に足を踏み入れた私を見るなり、先生は小さな手招きで私を呼び、他の先生が他のいない場所まで私を連れて行った。そして、昨夜のことは誰にも話さないようにと言ってきた。  もちろん人に話すつもりはなかったが、先生の真剣さに、他にも何かあったのではと質問をしてみると、先生は渋い顔をした後、今朝聞き込んだことを話してくれた。 「昨夜、◯×は、忘れ物を取りに行ったら、三階の教室のほとんどに明りがついてたって言ったよな」 「はい」 「後、帰る時にも明かりがついた」 「はい」 「でもな、学校の近所に住んでいる人達に聞いても、夕方以降、明かりが灯っているのを見たって人はいないんだよ」  それはいったいどういうことなのだろう。  私は確かに、自噴の教室以外に明かりが灯っていて、それが一つずつ消えていく光景を目にしたし、帰り際、先生も一瞬だが校舎中に明かりが灯るのを見ていた。なのに近所の人は誰も知らないって…。 「…◯×。仮にも教師がこんなことを言うのはどうかと思うが、先生は、世の中には知らなくてもいいことがあると思うし、昨日の件はまさにそれで、人に話すはおろか、自分の記憶からも忘れた方がいいことなんじゃないかと思ってる」  しみじみとそうつぶやく先生の様子に、私も無言で頷いた。  あの日以来、放課後は可能な限り早く校舎から出るようにしているし、夜の校舎に引き返すことがないよう、忘れ物には充分すぎる程注意している。  おかけで何ごともなく、私はもうじき卒業できそうだけれど、このまま学校に残り続ける先生は気が重いだろうな。  というか、もしかしたらこの先、入学した高校で似たようなことが起こらないとは限らないから、一人では絶対夜間の後者に近寄らない。それをずっと心がけていこうと思っている。 夜の校舎…完  
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