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第11話 もう1人の兄?
「茜ちゃん行くわよ!じゃあね~。」
「分かったわよ。少年!モデルに興味があるなら連絡してね~。」
優多は2人が尚も言い合いをしながら車に乗り込むのを見送ると、家路へと歩き出した。
「優多! 」
ふいに、聞き慣れた声を耳にし、足を止め振り返ると満面の笑みを浮かべた樹季の姿があった。
「樹季。どうして此処に居るんだ?」
「どうしてって…今日から俺の所に来るんだろ?」
「そうだけど…迎えはいらないって言ったよな?」
「二週間も泊まるんだから1人で荷物運ぶのは大変だろ?だから優しいお兄様が迎えに来てやったぞ。」
「誰がお兄様だよ?」
「俺様が。」
樹季はそう言って優多の額を指でピンっと軽く弾いた。
コイツに何を言っても無駄だな…
「分かった。お兄様の好意に甘させてもらうよ。」
「分かれば良い。車を待たせてあるからお前の家に荷物を取りに行くぞ。」
樹季は優多の手を引き、歩き出した。
車に乗り込み、樹季は彼の手の中に握られている一枚の紙に気が付いた。
「お前、手に何を握ってるんだ?」
優多は茜に渡された名刺に視線を落とし、
「別に。何でもない。」
肩をすくめてそう答えると、そのまま鞄の中に名刺を仕舞い込んだ。
程なくして、樹季が優多に尋ねた。
「さっき一緒に居たのは、お前の恋人か?後ろ姿しか見てないけど、スタイルが良いな。美人か?」
「お前は、そんな所しか見ないのか?
雅は恋人じゃない。友達だ。美人かどうかは俺には判断が難しいが、モテてはいるな。」
「ふ~ん。なら、惜しい事したな。声を掛ければ良かった。」
優多は呆気に取られた表情で樹季を見た。
「樹季。お前は節操って言葉知ってるか?」
「節操?そんな言葉あったかな?」
樹季は「クックッ」と笑いながら答えた。
「まぁ、聞けよ。俺が初恋の子を忘れられない事をお前も知ってるだろ?でも、彼女と再び会える可能性は無いに等しい。だから彼女以上に好きになれる子を探しているだけだ。」
「ふんっ。物は言いようだな。単にお前が節操が無いだけだ。真面目に恋愛しろよ。」
「俺は、至って真面目だ。只、身体が反応する相手に出会えても心が反応する相手に出会えていないのが問題だがな。」
樹季はしれっと言い放った。
駄目だ…
コイツにつける薬なんて無い。
優多は呆れ返ってそれ以上言い返すのを止めた。
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