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第12話 初めて見る顔。
すると、今度は樹季が優多に問いかけた。
「お前は?」
「えっ?」
「お前は、心も、身体も反応する相手に出会えたのか?」
優多は押し黙ったまま、窓の外に顔を向けた。。
その横顔からは、思い乱れている様子が見て取れ、自分が何気になく言った言葉に優多が反応し、想像もしていなかった優多の一面が垣間見えて、樹季は驚きを禁じ得なかった。。
これは…
どういう事だ。。?
優多は同級生達と比べると大人びたところがあるが、まだ14歳の子供だ。
それなのに…
今コイツがしている表情は、大人さえも魅了してしまいそうな程の色気を漂わせている。。
少し会わない間に、優多に何が起こったんだ?
何かおかしな事に巻き込まれてないと良いんだが。。
今度、尊にこっそり聞いてみるか。。
樹季が優多の変化に戸惑いを覚え思いあぐねた。
一方、別の車内では、茜が雅に優多についてあれこれと尋ねていた。
「さっきの少年は、もしかして雅の恋人?」
「違うわよ!彼は雅楽の親友で、私とも友達なの。」
「雅楽の親友なの?他人に余り関心を持たない貴方達が友達になるなんて、彼に人を魅了する力が備わってるって事だわ。もしあの少年が貴方の恋人だったら、交際を許す条件としてモデルを引き受けさせる事が出来たのに。残念ね~。今からでも、何とかならない?」
「私と優多が恋人同士になる可能性は極めて低いわね。もし茜ちゃんの事務所に優多を入れたいなら自分で説得してよ。」
茜は、ふと、雅が口にした彼の名前に聞き覚えのある気がして彼女に尋ねた。
「ねえ。あの少年の名前もう一度言って。」
「優多よ。嘉神(かがみ)優多。」
「そう。。優多って名前なのね。」
「どうしたの?」
「いえね。彼に以前にも何処かで会った事が有る様な気がするのよ。でも、あんなに魅力的な子に会えば、余程の出来事が無い限り忘れたりはしない筈なんだけど。。」
「茜ちゃん毎日大勢のモデルさんと会ってるから、その中の誰かと勘違いしたんじゃない?」
「。。そうね。きっと気のせいね。」
茜は記憶の糸をたどるのを諦め、雅が以前から行きたがっていたお店へと車を走らせた。。
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