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第18話 俺達の関係性。
「は~い。あっ。待って、今のうちにお手洗いに行ってくる!」
「優多、男性用のお手洗いは1階には無いから、2階に行って来いよ。」
「うん。分かった。じゃあ、ちょっと行ってくるね。」
優多はスッと立ち上がると、2人に手を振りながらエスカレーターに乗り2階へと上がって行った。
「ふふっ。慌ただしいわね。」
「そうだね。」
母親と雛多は顔を見合わせ、幸せそうに笑い合った。
その頃、偶然にも尊と樹季も同じデパートの2階に来ていた。
樹季が窓の外を見ながら尊に話しかけた。
「雨強くなって来たなぁ~。さっきまでは小雨だったのに今はザーザー降りだ。どうする?運転手さんに電話して迎えに来てもらおうか?それとも上の階で映画でも観て雨が止むのを待つか?」
「どんどん雨脚が強くなってるから暫く止みそうもないな。。電話して迎えにきてもらおう。映画は今度雛多と優多も一緒の時に観ようぜ。」
それを聞いて樹季が何か言いたげに、口をもごもごさせている。
「なんだよ?何か言いたそうな顔をしているな。」
尊は訝しげな表情を浮かべて、樹季に尋ねた。
「いやな。お前と雛多は、本当に優多の事大好きだなぁって思ってさ。お前遊びに出かける時は、いつも優多も誘ってるよな。」
「俺達4人は幼馴染なんだから、誘って当たり前だろ?それにお前だって優多を可愛がってるじゃないか。」
「確かに俺も優多が好きだよ。俺には姉ちゃんしかいないから弟みたいで可愛いし、でも。。お前達はちょっと優多を甘やかし過ぎ 。」
「そうか?」
「うん。雛多はまだ分かるよ、優多の兄貴だからな、でもお前は。。ん~。なんてゆうか、優多を溺愛してる感じ。」
「俺も優多が弟みたいだから可愛がってるだけだ。可笑しな事言うなよ!」
「ふ~ん。まぁ、そうゆう事にしておいてやるよ。」
「なんだよ?」
樹季は尊を面白半分にからかいながら目線を横にずらすと、丁度お手洗いから出てくる優多が目に入った。
「あっ。優多だ。」
「えっ?」
尊は優多の名前を耳にした途端、不機嫌になっていた表情が一変し満面の笑みを浮かべながら樹季が見ている方向に向きを変えると、優多を見つめた。
尊の締まりの無い表情を眺めながら、樹季は心のなかで呟いた。
ほらな。
やっぱり溺愛してる。。
まるで恋人にでも会えた様な顔だ。
「優多!」
優多は尊の呼ぶ声に気が付き、2人を見つけると、嬉しそうに走ってきた。
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