第6話 尊 反論出来ず。

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第6話 尊 反論出来ず。

「…多 優多!話聞いてるか?」 「へっ?あぁっごめん。なに?」 「さっき父さんから電話があって二週間程仕事の手伝いをする事になった。」 尊は壬生帝国グループの後継者であり、17歳にして既に建設事業部の責任者として父親の仕事の補佐もしていた。 「ふ~ん。いつから?」 「明日から。お前学校から帰ったら支度しておけよ。」 「なんの支度?夕食の支度?俺料理出来ないの知ってるだろ?」 「お前何言ってるんだ?仕事の手伝いをしている間俺は実家に泊まらなきゃいけないんだぞ。だからお前も支度をしておくんだ。」 「えっ?俺も行くの?」 「当たり前だ。お前を残して行くわけないだろ。」 「う~ん。遠慮しておくよ。二週間ぐらいだったら1人でなんとかなるしさ、一緒に行ったら尊兄は俺の世話焼かなきゃいけなくなるだろ?お父さんの仕事の邪魔したくないしね。」 「駄目だ。お前を独りきりにするなんて心配で出来ない。」 お互い譲らず、少しの沈黙の後、優多が先に口を開いた。 「。。。分かった。俺が独りきりじゃ無ければ良いんだね?優多は携帯を手に取り電話をかけた。」 尊はその様子を訝しげに見ていた。 「もしもし。うん。元気だよ。あのさ、急で悪いんだけど、明日から二週間そっちに泊まっても良い?尊兄がお父さんの仕事の手伝いで実家に帰るから、いや、迎えに来なくて良いよ。明日学校が終わったら行くよ。うん。じゃあね。」 「誰に電話したんだ?」 「樹季(いつき)。明日から来て良いって。」 「樹季の所に行くのか?アイツは一人暮らしだぞ!」 「何怒ってんの?独りは心配だって言ったから樹季にお願いしただけだ。それに樹季の所なら安心だろ?俺が兄貴の家に泊まって何の問題が有るって言うんだ?」 正論を言われ、尊は言葉に詰まった。 「もういい。勝手にしろ!俺は先に出るからな!」 尊は怒って出て行った。 尊兄の負担を軽くしたいから決めた事なのに、何を拗ねてるんだ? 優多は訳が分からなかった。 まぁ、良いや。 俺も学校行こうっと。 玄関のドアを開けると尊が立っていた。 「行くぞ。」 尊はまだ不機嫌な顔をしたまま、優多の手を引いて歩きだした。 優多は笑い出すのを堪えながら、お前。先に行くんじゃなかったのか? 喉から出かかったその言葉をのみ込み 「もう少しゆっくり歩いてよ。」 そう言いながら、尊について歩きだした。。
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