喫茶店

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喫茶店

今日も俺は、いつもの喫茶店に来ている。 指定席はカウンターの左の端の席、手には文庫本。 カウンターの向こうには、30代前半と思われるマスター。 ちょうど俺の珈琲を淹れてくれている。 俺は手の上の本に視線を送る振りをしながらマスターをちら見している。 俺はマスターの美しい横顔が好きだ。 オールバックにした前髪の生え際から、直線的な額、目の部分で深く窪んだライン。 それがまたスゥっと伸びていって、鼻はそんなに角度は広くない。 そこからやや厚めの唇が上と下にあって、その唇の下はキュッと凹んでいる。 ちょっと良いカンジに尖った出過ぎてない顎の形がキレイだ。 そこからの首、喉仏の動きや、肩、腕への筋肉の付き加減もまさに俺の好みドンピシャだ。 俺は今まで、こんなに完璧に俺の好みの横顔を持つ人に出会った事がない。 もちろん正面の顔も、どストライク。 たまたま雨宿りで入ったこの店だったが、「いらっしゃいませ。」と言われた時に、俺は固まってしまった。 一瞬で一目惚れして、それ以来、俺は時間を見つけてはせっせとこの店に通っている。
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