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――――――
「止めて欲しかったのか、見つけて欲しかったんやろうなぁ……」
連絡をして、駆けつけてきた警察と監察医がため息まじりにそう言いました。
木々にびっしりとつけられた風鈴は、女がつけたものだろうと警察が言います。
どんな事情があったのか――死のうと思って山に入った女。
けれども、未練があった。
『誰か私を見つけて』『誰か私に気づいて』『私を止めて』
“私を助けて”
一人、死出の道を行きながら。
女はどんな思いで、木々に風鈴をつけたのだろうか。
この風鈴が――きっと、誰かを導いて、私を見つけてくれる。
私を助けてくれる。
女を取り囲んでいた無数の風鈴の音は、女の未練と執着の叫びだったのでしょうか。
夏になると――風鈴の音を聞くと思い出すのです。
恐ろしくも哀しい、人の未練と執着を――。
チリーン……
チリチリ、チリーン……
チリーン……チリーン……。
【了】
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