お嬢様は王子様なんてだいきらい

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 有馬にとっては寝耳に水だったのか、驚いた顔で足を止めた。 「どうして?」 「理由は……まだ言えない。でね、あたししばらく忙しくなっちゃうから付き合うフリ辞めてもいいかな?」  自分から言ったのに、いいよってすぐ言われたらやだなとも思う。涙が溢れそうになる。  あたしは必死に笑顔を浮かべて「ごめんね」と口にした。 「なに、まさか寂しい……とか?」  有馬の口から寂しいと返ってくるはずがないとわかっていても、ほんの少しだけ期待してしまう気持ちもあって。 「そんなに〝柊くん〟が好き? 離さないよ……俺から離れるなんて許さないから」  有馬から期待していた言葉は聞けなかったけど、怒ったように繋がれた手に力が込められた。  柊くんがって……あたしが好きなのは。 「中等部三年の時に帰国して、久しぶりに蘭に会えると思って楽しみにしてた。なのに蘭は俺のことちっとも覚えてないみたいだし、まさか兄さんに夢中になってるとは思いもしなかったよ」  そういえば有馬は中等部の時転校してきたんだった。クラスの女子たちが王子様がきたって騒いでいたのを覚えてる。  あたしが毎日放課後柊さんのところに通い詰めてた頃だ。 「有馬がゆっちゃんだって、昨日おじいちゃんに聞いた」     
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