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「有馬くんっ! と、あら今日から入寮の子ね」
さすが良家の生徒が利用するだけあって、立派なマンション並みの寮の玄関口を入ると、五十代ほどの人の良さそうな女性が管理人室からひょっこり顔を出した。有馬の顔を見ただけで頬を赤らめるところを見ると、こいつは老若男女関係なく人タラシなことがわかる。
「管理人さん、すみません救急箱ありますか? 彼女には俺の方から規則の説明をしておくので部屋の鍵だけお願いします」
「あら、そう? 助かるわ~じゃあこれね、よろしく」
「蘭、こっち」
あなたの蘭呼びはもう定着なんですかと文句を言いたくなったが、誰が見ているかわからない場所で地を出すわけにいかない。黙って有馬の後をついて歩くしかなかった。
「ここに座って。手を出して」
案内されたのは広いリビングのような場所で、テレビやソファーが置いてあり壁一面には本がたくさん収納されている。談話室なのか、チラホラ他の生徒の姿があった。
「手……? どうして」
グッと手を引かれてローテーブルの上に置かれた。何なのよと視線だけで抗議すると、あたしの手に消毒液のついた綿が乗せられた。
「い、った……」
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