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あたしのタイプは全身に程よく筋肉がついてて、強くて逞しい人。もちろん優しさは外せないけど、何かに一生懸命打ち込んでる人が好き。できればボクサー? 有馬柊くんのことは憧れて好きすぎて、遠い世界の芸能人みたい。あたしの姿なんて眼中にないぐらいリングに立つ彼は真摯だ。
はぁっと深いため息をついて、朝食を取りに食堂へ行くとトレーが置かれて今一番会いたくない男が隣に座った。
「おはよう、蘭」
「おはよう有馬くん」
食堂が一斉にざわついて、食堂にいる全員の視線が突き刺さる。そりゃ、そうだよ。有馬は学園の王子様とか言われてるんだから。有馬さまなんだからさ。
いっそのことここで大声で叫んだらどうだろうか。
あたしはニセモノ彼女でーすって。
カリッカリに焼けたクロワッサンを頬張ってグッと口を閉じた。邸だったら〝美味しー!〟なんて言っていたが、そういうわけにはいかない。
パンを食べる時も一口サイズに千切りながら、小さく口を開く。ナイフとフォークを使い、ウィンナーを切る。ブスッと刺してガブッと食べるとか、絶対にここではやってはいけない。
朝から相当のストレスだ。
「食べるの遅いね。食べさせてあげようか?」
「いいえ、結構です。お気遣いありがとう」
あたしが引き攣る頬を何とか緩めてニコッと笑うと、ほんとうの彼氏ならば百点満点であろう笑みが返された。
「無理しちゃって」
「うるさいなぁ……」
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